
『私は驢馬に乗って下着を売りにゆきたい』/ 鴨居羊子
鴨居羊子 (かもい ようこ) 1925〜1991・・・
新聞記者として勤めているうちに、「なにかを創造する立場になりたい」と
当時では画期的なデザインの女性下着を作り始める。
以前から興味のあった本なのですが、やっと読みました。
鴨居羊子が新聞記者を止めてどのように下着作りを始め、その仕事が
どのように世間の中に居場所を見つけ育っていったかを綴った自伝的随筆と
いえば良いでしょうか。
まず、文章の上手さが際立っています。
元・新聞記者ということで文を書き慣れているというのもあるのでしょうが、
それにしてもオモシロイ。
例え人生自体が波瀾万丈で面白かったとしても、文章がまずければ
やはり読み手をグイグイ惹き付けることは難しいでしょう。
そういう点で、”自伝””記録”といった価値を取り払っても、「本」として
読み応えがあります。
彼女が「なにかを創造したい」と思った頃、女性下着はまったく立ち後れて
いました。
色は白もしくは肌色のみで、生地も分厚く着心地も良くない。
それが「普通」で「当たり前」だった時代、色彩豊かなキャミソールやパンティ、
ストッキングを吊れる最低限の細さのゴムを使ったガーターベルトなどを作り出し
人々の目に触れさせることは、いま想像しても大変なことだったと思われます。
しかも彼女は、斬新さや話題性のみを狙ったわけではなく、あくまでも
”機能的かつ美しい下着”を造りだそうと考えました。
新しい事を成功させるには、もちろん先見の明が必須で、彼女にはそれがあり
更に才能もありガッツもあり、時代背景的な運も少しは味方したかもしれません。
だから、「ものを造りたい」という気持が同じというだけで簡単に彼女に自分を
重ね合わせるのは畏れ多いですが、それでもこの本は私に力をくれます。
大変でも何かを作るワクワク感を、鮮やかに思い起こさせてくれるのです。
初めての個展、その時の収支決算がヌード喫茶業界のおかげで助かったくだり、
一坪の事務所からの出発etc. どこをとってもオモシロく興味深い話が満載。
また、彼女が芸術家でも啓蒙家でもなく、生活の一部としての下着を作って売る
商人であろうとした事にも考えさせられます。
それは以前、北欧のデザインの素晴らしさが一般市民の生活の質を豊かにするために
使われていると知った時と同じような感銘を私に与えます。












